☲ミラーが笑った◎

「それじゃあ、国語でいい点を取って、優に話してやるか」

「うん、そうする。それじゃあ、行ってくるねー」

「ああ、しっかり勉強しな」

 ひろみは軽い足取りで東の坂を上がって行った。

「おはよう」

 校門の前で校長先生がひろみに声をかけた。

「おはようございまーす」

「きょうはいつもより早いね」

「はい。きょう、国語のテストがあるから、早く来ました」

「そうか。えらいな。がんばってね」

「はーい」

 教室にはまだ誰も来ていなかった。ひろみは国語の教科書を開くと、漢字の勉強をはじめた。

 その日の帰り道。ひろみは自分の前を歩いている一匹の犬に気がついた。

首輪をしているので、きっとどこかの飼い犬だろうと思って、歩きながら見ていると、その犬はミラーの直ぐ下に立ち止まった。そして、いきなり片足を上げ、しゃーっと小便を始めた。

「あっ、あっ、こいつめ」

ミラーボーの声がひろみの耳に届いた。