「へえー、その優って子も、ミラーボーとお話しするの?」

「ああ、するさ。学校のこととか、宿題のことを話していく」

「あっ、宿題!」

「どうした、ひろみ」

「きょう宿題を忘れて、先生におこられちゃった。帰ったらすぐやらないと・・・」

「先生、何の宿題を出したんだ?」

「作文。春の花について、書いてくるようにって」

「春の花か。春の花ならいくらでもあるな」

「そんなにある?ぼくは梅の花とか、桜の花しか浮かばないよ」

「まあ、ネットで検索してみるんだな」

「うん、そうだね。帰ったらそうしよう」

「じゃあ、あしたは忘れて家においていかないようにしないとな」

「うん、忘れないよ。じゃあ、またね。バイバイ」

「ああ、またな」

 ひろみの頭の中は、もう宿題のことでいっぱいになっていた。


 翌日も、その次の日も、朝から雲ひとつ無く、暖かい日になった。

「おはよう、ミラーボーいる?」

「ん、ああ、ひろみか。昨日は宿題忘れないで持って行ったか?」

「うん、持って行った。先生に作文見せたら、二重丸もらっちゃった」

「作文か。優も作文で先生に誉められたって言っていたな」

「優って子、もう行った?」

「ああ、優はいつも朝早いからな。毎朝この先から、黄色いスクールバスに乗っていくんだ」

「黄色いスクールバスって、あの若草学園の?」

「ああ、そうそう。若草学園の六年生って言っていたっけ」

「六年生?ぼくと同じだ」

「そうか。ひろみも優と同じ六年生か」

「でも、いいな。そのまま大学まで行けるんだ」