それから30分。
玄関の鍵が開いた。
そして、リビングのドアが開いた。
「ごめんっ、季蛍」
聞きたかったその声。
聴いたとたん涙が溢れる。
なぜか。
「ごめん、季蛍……………………………………。
急患、入っちゃった。
ごめんね」
そう言って、優しく後ろから抱いてくれた。
でも、そんな蒼に、どこか、イライラしていた私は、蒼の手を振りほどく。
蒼のびっくりした表情が、私の視界に飛び込んでくる。
「季蛍?」
「早く帰ってこれるって言ったじゃない!!
ずっと待ってんだよ、それなのに…」
そんなこと、言うはずじゃなかった。
ホンとなら、なるべく早く帰ってこようとしてくれている蒼に、
“ありがとう”
って言いたかった。
なのに、
なぜか、
私の口から出た言葉は違う。
「…ごめん。」
悲しそうに謝る蒼を見て、なぜか、胸が苦しくなった。
「…わ、たし、違っ…………」
今更、言ってしまったことに後悔……なんて遅い。