ガラガラッ
次の日、いつもより早めに出勤する。
季蛍の寝る病室に顔を出した。
季蛍はまだ寝ている。
ベッドサイドの椅子に座る。
季蛍の首もとや、額に、汗がびっしょりとついている。
どうやら熱がまだ下がらない様子。
「……………………季蛍………」
タオルでその汗を拭く。
「………んん、ん~……」
季蛍が目を覚ました。
「……あ、ごめん、起こした…」
「蒼?…………早いね………………………」
「…………んん?
今日は早めに来たんだよ。
それより着替えよっか。汗すごい」
あらかじめ家から持ってきていた服を、カバンから出す。
「起きれる?」
「………うん、」
ゆっくりと、体を起こす季蛍。
「ボタン外すよ?」
「うん」
服を脱がせ、タオルで汗を拭き、新しい服を着させる。
季蛍はボーッと向こうの壁を眺めている。
「……」
そっと首もとに手をあてる。
「……胸の音、きかせてくれる?」
タオルをたたみながら、季蛍に問う。
「……………ぅ…ん…いいよ……」
とは言いつつ、嫌そうにする季蛍を見て、思わず笑みがこぼれる。
「よし、今日の季蛍は素直だな」
聴診器をつけ、また椅子に座る。
「…………だって…。蒼が………………」
「……俺?」
季蛍の言いたいことは、だいたい、予想つくんだけど。
「ちょっとこっち向いて」
聴診器を手に取り、季蛍に言う。
季蛍が体を俺の方に向ける。
でも、顔を背けている。
「………………なんでこっちみないの?」
「…………………え?
…………だ、だって…」
「…………だって?」
「は、恥ずかしい…」
俯いて言う季蛍を見て、また笑みがこぼれる。


