今思えば、季蛍は、愛優を妊娠しているとき、我慢していたのかもしれない。
こういう風に、泣いていたり、弱音をはいたり、精神的に不安定だったはずの季蛍が、あのときは強かった気がした。
………相当我慢していたんだな。
なんで気付いてやれなかったんだろ。
「……トイレ……………………」
弱々しすぎる声で、季蛍が呟く。
「……トイレ?吐く?」
頷く季蛍。
急いで季蛍を抱え、トイレに駆け込む。
気持ち悪いけど、何も食べていないせいもあり、吐くことが出来ない様子。
ずっと、背中をさすり続ける。
「…いや、もう、…………
…………………イヤ………いや、」
弱々しい声で、季蛍がいう。
「……」
そんな辛そうな季蛍を診ていると、こっちまで辛くなってくる。
「…イヤだ、もう、いや………………」


