「季蛍さ、イヤだとは思うけど。点滴してから帰ろう?」
「………」
「今も苦しいでしょ?ね。」
よっぽど息苦しいのか、素直にうなずいた。
「よし、」
点滴を取ってくれば、涙目で俺を見つめる。
「……や、………………………やっぱり、嫌…」
点滴を目の前にして、泣き出しそうになる季蛍。
ベッドに腰掛けて、丸イスに座る季蛍の涙を拭う。
「季蛍…、点滴、、しよう?したら楽になる。」
「……や」
椅子をたって、フラフラする足で俺から離れようとする。
そんな季蛍を抱き、ベッドにまた腰掛けて、俺の膝上に座らせる。
「逃げないの。苦しいのに我慢すんな。」
優しく涙を拭えば、また涙を流す。
「腕、出してごらん?すぐ終わる」
季蛍の背を、俺の前に向けて、そっと右腕をもつ。
その右腕を、ジーッとみつめて、また泣きそうになる季蛍。
「見るな。見ると余計痛いでしょ?」
そう言うけど、季蛍は一向に顔を背けない。
そんな季蛍の目に、俺の左手を被せて、点滴をさした。
そして、ゆっくりベッドに季蛍をおろす。
「点滴終わったら帰ろう。それまで寝る?」
首を振る季蛍。
「じゃあ隣にいるから。」
ベッドに俺も座り、季蛍の髪を分ける。
「………そういえばさ…どうして屋上にいたの?」
「……………………………突然…苦しくなって……………………。
息苦しくなったから…外の空気…吸いに………」
「………そっか。」