蒼は、一瞬びっくりしたけど、すぐに状況を把握したようで、背中をさするのを、かわった。
「ハァ、、ハァハァ、あおっ、…」
「うん、季蛍、これ吸おっか」
蒼が、白衣のポケットから吸入をとりだして、季蛍さんの口元に持って行った。
「ハァ、ハァッ、あ、お…ッハァ…ハァハァハァ…」
「季蛍ってば。ほら、吸って」
吸入から顔を背ける季蛍さん。
「ッハァ、、蒼…ハァーッ…」
「季蛍?苦しいよね、吸ったら楽になるから」
蒼が優しく季蛍さんに言うけど、季蛍さんは涙を流したまま、苦しそうにしている。
「きーほ?
落ち着いて。
………
きーほ、吸ってくんないと…」
季蛍さんは、俯いて、苦しそうな息遣いを続けている。
「……………ハァ。ったく…」
蒼は、季蛍さんのうしろにいき、季蛍さんを抱くかたちになる。
蒼は、季蛍さんの呼吸音を感じている様子。
だんだんと、落ち着いてくる季蛍さんを抱き蒼は「そうそう、深呼吸」「落ち着いて」などと声をかける。
そして、季蛍さんが息を吐き出したあと、吸入を口にあてる。
季蛍さんが、顔をしかめながらも、吸入を吸う。
蒼は、まだ季蛍さんの呼吸音をきいている。
「あ、港ごめん、
ありがとう」
「あ、いやいや。」
「港もう戻っていいよ、悪かったな」
「全然、季蛍さんお大事に」
そう告げて、診察室に戻った。