ヒナタが俺の隣に腰を下ろして、長い髪を耳にかけた。
「なんで学校辞めたんだよ」
唐突に今日待ち合わせした本題をぶっこんでみた。
この質問にヒナタはただ斜め下を見つめて、どうでもいい事の様にポツリと答えた。
「父親が辞めろって言ったから」
「それって経済的な問題?」
「‥‥」
黙り込んでしまったヒナタは、何を考えてるのか分からない。
ボンヤリとして、何だか中学の頃も無気力な奴だったけど今はなにもかもどうでもいいみたいな雰囲気だ。
一体何があった。
中学の頃の唯一の友達と呼べる存在なのに、俺はヒナタの事を何も知らなかったんだとこの時わかった。
「別に」
長い沈黙の後に一言だけヒナタは言った。
明らかな拒絶を含んだ声だった。
なのに、その横顔は歪んでいて。
目に涙を溜めていることが分かって。
必死に唇を噛んで何かに耐えてる。
「俺は、お前を助けるよ」
何も考えずに口が先に動いた。
中学の頃、唯一楽しかった思い出をくれたヒナタを助けたいと思った。
俺を孤独から救ってくれたヒナタを、今度は俺がと。
そう思った。