クウは優しく、平等だ。
その優しさに俺は何度も救われ、周りの奴等も何度も助けられてきた。
それを近くでみていて、その優しさを好きになった。
だけど、俺はそんなに器の大きい男じゃないから。
今はその優しさが俺だけに向けられて、俺だけが独占してしまいたいと思う。
「それ以上は言わないでよ、クウ」
でもそれは、俺がクウを独占するだけじゃなくてクウにも俺を独占してほしいと思うから。
だから、その先は聞きたくない。
「…」
「…」
「…アオくん」
柔らかい優しい声。
クウが何時も人を助ける時の声だ。
下を向いてクウの顔をみない様にする。
絶対俺、今女々しい顔してる。
クウにはカッコいい俺だけを、見てて欲しかった。
口を塞ぐ手に力が入れられなくて、クウのやんわりとした力で離れる。
「言って欲しくないって分かるから、もう言わない。私もアオくんと同じ気持ちだから」
小さな両手が俺の両頬を包み込んで、上に上げる力に俺は逆らわなかった。
「だけど、ヒナタさんも私と多分…同じなの。」
「…」
なに、それどういうこと。
そう思ったけど、クウの言葉を聞きたくないけど聞くのに必死でそれは後回しになった。
「私はヒナタさんを放って置けない。でも、ヒーローになれるのは私じゃないの」
そんなことないと言いたいけど、実際アイツ友達いないからな。
…はぁ、そーだね。
クウ、そうだよね。
助けを求める事も出来ないアイツを、ヒーローの俺が救ってあげないとね。
「…ごめん、クウ」
ごめん。
ほんとにごめん。
この時はクウの話に納得した俺だけど。
後でクウの言葉を思い出して、俺は俺を殺してしまいたくなったんだ。
例えアイツが苦しんでても、そんなこと関係ないと思えるくらい。
「俺、ヒナタを助けたい」