朝方、誰もいない教室。


時間が早すぎたかな。


時計を見ると、まだ6時半。


そろそろ皆起き始めたかな?


ぼんやり考えながら自分の席に近付く。


「死ね」「帰れ」「キモい」等の暴言が書かれた僕の机。


もうそれも慣れたな。


机に鞄を置き、開く。


使うはずない教科書を机の中に入れていく。


今日から樂君が転校生として入る。


そして復讐までの道筋を考える。


そういえば真希さんにもあのメール、届いたのかな。


登校してきたら聞いてみようかな。


「俊弥、ねえ俊弥」


囁き声が聞こえる。


廊下を見ると、いつもの笑顔で手を振る樂君がいた。


「どうかしたの?樂君」


立ち上がり、樂君のもとへ歩きながら聞く。


「メール、見た?」


メール?樂君からのメールだろうか。


それともあの悪戯メールか?


「あの悪戯メール。何か変な事書いてあったでしょ?」


「あ、ちょっと待ってて。マナーモードだから音出なくてさ」


鞄をまさぐり、携帯を取り出す。


ロック解除ボタンを押し、メールアプリを起動。


受信ボックスを開くと、新着メールが一件。




『件名:無題
本文:今日、7月5日からゲームを始める。
今日から明日は無い。精々最後の『正常』を楽しんでおけ。以上。』





「はぁ?何だよこれ」


「今日から明日が無いって、どういう事だろう?」


「さぁ……ま、こういうのは無視しとけば大丈夫じゃないの?」


「そうだね」


樂君はシアン色のスマートフォンをいじりながら答えた。


僕はもう一度メールを読んだ。


明日が無い?最後の正常?


何だろう……


首を傾げると、背筋が冷たくなる感覚。


冷たい氷の柱に貫かれているような錯覚。


貫かれた方向、それは樂君の方向。


樂君を見ると、冷たい感覚は無くなった。


樂君は鼻歌を歌いながらパズルアプリで遊んでいる。


さっきまで樂君が睨み付けていた気がするけど、どうなんだろう。