やがて「よし」と呟いて携帯を閉じた。


「樂君まだガラケーなの?スマートフォンにすればいいのに」


僕は携帯…スマートフォンの画面に指を滑らせる。


「なんかこれじゃないと慣れなくてさー。メールとかはこっちでやってるんだ。
一応スマートフォンも持ってるけど」


右手に持ったガラケーえ前に突き出し、続いて左手で左のポケットをまさぐり、シアン色のスマートフォンを取り出して同じように突き出してみせた。


「すごいね。二つも持ってるんだ」


「うん。メールとかはガラケーの方がやりやすいけど、スマートフォンはアプリがいっぱいあるからね」


黒い携帯を右ポケットにしまい、今度はシアン色のスマートフォンをいじる。


「その色いいなぁ。かっこいい」


「でしょ。親にもらったんだ。もう居ないけど」


「え?」


今、樂君は親がいないっていったよね。


前は生きていたけど、もう死んだ……


「まあいわゆる形見ってやつ?だからすごく大事にしてるんだ。
ガラケーの方がやりやすいなんて嘘。使ったら壊れそうで怖いだけ」


樂君は少し悲しげな表情をみせた。


「樂君……」


僕が慰めの言葉を探しているとき、屋上のドアが開いた。


「またここにいたの?俊弥」


「あ、真希(まき)さん」


ドアを開けて入ってきたのは、クラスメートの相澤(あいざわ)真希さん。


不思議な雰囲気の女子。


「いい加減サボるのやめたら?余計にいじめられるよ」


「へ?俊弥いじめられてるの?」


樂君が首を傾げてこちらを見てくる。


「うん……まあ」


曖昧な返事を返すと、樂君の目付きが鋭くなった。


「そいつら許せない。絶対復讐しないと」


「い、いや…復讐とか、別にどうでも……」


「そうね。復讐しないとダメだわ!俊弥!」


「え、いや……」


二人から復讐を強いられてかなり戸惑う。


「えーっと…その、明日までに考えるから!」


顔の前で両手をぶんぶん振りながらなんとか答えた。


「そうと決まれば作戦会議よ!」


「おー!」


真希さん完全に樂君と馴染んでるし……


溜め息を吐きながら二人が座っている所に腰を降ろした。