君までの距離

「っ......」
と軽く舌打ちをしてからマスクを拾いに行ったが私には見えてしまった。
恐ろしいほど整っている顔。
高い鼻。
薄めの唇。
その顔を見た瞬間、心臓の高鳴りは抑えきれないなかった。
マスクは汚れてしまったらしく、ゴミ箱に捨てそのまま私の正面の席に座った。
......直視できない。
そう思っていると、
「顔赤いぞ.....熱か......?」
そっと伸ばしてきた手を私ははたいてしまい、首を横に振った。
そして、聞いた...。顔を見て。
「どうして...顔マスクで隠すんですか...?
きれいな顔立ちなのに...」
軽い質問だと思ったが、夜都くんは少し顔色を変え、そして言った。
「...........目立ちたくねぇんだよ...」
目を合わせず、淡白に。
私は察した、辛いことがあったのだと。
そして深くまで聞かずそうですか。と返した。
「んなことどうてもいいから...とっとと進めるぞ......」
距離が近い。
こんなんじゃ頭に入らない.....。
初めて味わう感情に私の手は震え、顔も真っ赤に染まっていた。
すると、急に夜都くんは立ち上がって私の後ろに立ち、手を握ってきた。
そして耳元で静かに言った。
「......書くの手伝ってやるよ...」
シャーペンを握っている私の手の上に自分の手を添え、軽く握った。
「ここは.........」
心臓は鼓動が聞こえそうなほど、ばくばくしていた。
早く...この時間が終わりたい......。
けど...終わりたくない......。
いろんな感情が混ざり、涙が出た。
夜都くんもそれには驚いたらしく、悪かった。と一言告げ、教室を出ようとしていた。
どうやら、自分の所為だと思っているらしい。
とっさに私は夜都くんの袖をつかんだ。
そして、蚊の声で言った。
「...いか、...ないで......ください........」
そんな私を見て夜都くんはため息をつき、そして頭を撫でてくれた。
その手はとても安心感のある手でふわふわした気分になっていると、夜都くんは席につき、来いと言った。
それに促されるまま私は座り勉強を教えてもらった。