私は、……私は、この男性が買ったポップコーンを上映中、勝手に食べていたんだ。
あのキャラメル味のポップコーンは、この人のだったんだ。
本当に何しちゃってんだ、私!
「す、す、すみません!わ、私…、その…、ポップコーンを…」
自分の犯した恐ろしい失敗に混乱した私が紡ぐ言葉は、思い切り吃っていて聞き取りにくい。
それなのに、
「ハハッ。みたいですね」
と笑いながら言う彼はなんて良い人なんだろう。
「す、すみません!本当にすみません!」
兎に角、今の現状では私は頭を何度も下げてこの人に謝るしか出来る事が無い。
頭を下げ続ける私に困惑したのか困った様な彼の声が降ってくる。
「あっ、あの、取り敢えず、ここ出ませんか?」
彼の声音はほどよく低くてよく通る声。
結構好きな声音だ。
でも、今はそんな事を考えている場合じゃない訳で。
彼の提案に「あっ、…そうですね。すみません」と再び頭を下げる事位しか出来ない状況なのだ。
二人で劇場内から出る為に歩を進め始めると、彼が眉を下げて口を開く。
「謝らなくても良いですよ」
本気でそう思っている雰囲気のその言葉。
この人、良い人過ぎる!
かと言って、甘えてしまう訳にもいかない年齢な訳だ。これが、学生とかなら甘えてしまっても良いかもしれないが、25歳の女は絶対に駄目だ!
それが馬鹿かもしれないが、働く女性のプライドなんだ。


