「本当にナンパです。こんな男からじゃ迷惑かもしれませんが」
必死にそう言ってくる彼に、思わずクスッと笑い声を漏らすと「凄い謙遜」と口にした。
「えっ!?」
驚いて目を丸くする彼にまたクスクスと笑い声が漏れる。
貴方の言うこんな男に目を奪われたんですが。
ド直球にナンパだと言って来る男ともう少し話したいと思っていますが。
そんな気持ちは一先ず胸の中に閉まっておく。
「こちらこそ、一人でお昼も味気ないなぁって思ってた所です」
「本当に!」
「はい」
「よっしゃあ!」
小さくガッツポーズを繰り出す彼は見た目は私と同じ歳位なのに、もっと若いんじゃないかと思える程だ。
「あ、あのお名前をお伺いしても」
「山路 梓(やまじ あずさ)です」
「梓さんか。……やっぱり可愛い名前だ」
呟く様に私の名前を口ずさむ彼。
が、彼の言葉に違和感を感じて首を傾げる。
「やっぱり?」
「あー、実は何度かこの映画館で一緒になってまして」
頭をぽりぽりと人差し指で掻くのも、なんだか様になっていて格好いいと思ってしまう。
それにしても、……彼も気付いていたんだ。
私達が映画館で何度も会っている事に。
「ああ、知ってます。いつもコーラとポップコーン買ってますよね。私と同じだぁって思ってたんです」
そうだ。彼は私と同じで、いつもコーラとポップコーンを買ってるんだ。
観る映画もかなりの確率で被っていて、その上での売店で買う物が同じ。
目を引かない訳がない。


