私が髪を切った訳





「見て、ちょっとこれ。信じられない。ガラス、全部そろってるよ」





彼女は興奮気味にわたしを見た。




わたしも呆然としたまま、かろうじてうなづく。






「見つけて、直してくれてたんだね」



「でも、だったらどうして教えてくれなかったんだろう」



「言い出すきっかけがなかったんじゃない? あんた、どうせゴミになるだけだってわりとあっさり捨てたじゃない」



「あっさりなんて捨ててない」



「わかってるけど、未練があってもその場で捨てられるってのは、つまりそういうことでしょ。いるのかなー、でも渡したら余計なことって思われるかなー、なんか変な感じに受け取られても困るなー、みたいな?」





教師という立場ならなおさらだろう。





「そうね」





だからずっと手許に置いておいたのだろう。



しかし、いざ渡そうと思ったその日、わたしは学校に来なかった。