「羽菜と出会ってなくても、オレは多田さんとは付き合ってなかった。

…羽菜と出会わなければ、一生、恋人も出来なかったかもしれない。

…いや、作ろうとも思わなかったと思う。

それくらい仕事が生きがいだったし・・・」


「…私は、博さんにとって、どんな存在ですか?」

オレを見上げた羽菜が、問いかける、真剣な眼差しで。


オレは微笑み、羽菜の頬に触れた。


「仕事と同じくらい、…いやそれ以上に、大事な存在になったよ。

仕事中に、誰かを想うなんて、初めてだしな・・・

祐司にも言われたんだ、何か良い事があったのかって。

羽菜を想うと、幸せだし、どうやったら幸せに出来るだろうって思う。

この気持ちは、ずっと変わらない。まだ二人でいる時間は短いけど、

一緒にいればいるほど、その気持ちは大きくなるって、断言できる。

だから、オレを信じて、ついて来てくれないか?」


…いつしか羽菜の涙は止まっていた。

でもまだ目は潤んでいて、光が当たると、キラキラと輝いて…

人の泣き顔を、こんなにも綺麗な物だと初めて知った。



「…博さんの事、信じます。

博さんの想いは、しっかり聞きましたから」

そう言って羽菜は、優しい笑みを浮かべた。