・・・・それからの私は。

家に帰るなり、部屋の掃除を隅々までして、

来るかどうかも分からないのに、夕飯まで作ったり。


女の子らしい事を次々にこなしていく。

普段の私はズボラで、掃除嫌いで、料理もほとんどしないのに、

博さんの事を想うと、何でも出来ちゃう事に、

自分でも驚いている。



でも、気が付けば、夜になっていて、7時になっても、

8時になっても、9時になっても、…博さんから、電話すらかかってこない。


大工と言う仕事は、大変だと言う事は知っている。

工期もあるし、施主や、工務店とのやり取りも大変だろう。

自分の父親も、そうだったから。

頭では十分わかっている。・・・でも、やっぱり、寂しく思ってしまう。


ソファーに猫のように丸まって、テレビのチャンネルをコロコロと代えていた。

・・・そんな時だった。


携帯が鳴り響く。私は慌ててそれに出た。

「もしもし」

「ゴメン、博之だけど」

…待ち焦がれた博さんからだった。