・・・でも、この手が好きだと感じている自分もいた。

事務職の人の手は綺麗だけど、

私はゴツゴツしてて、まめがあったり、傷があったりする、

職人さんの手が好きだ。

こうやって繋いでると、凄く守られてるって感じるんだもの。


「博さんの手、好きです」

「…手が?・・・そんなこと言われたの、初めてだな」

そう言って博さんは笑った。

でも、私を掴む手は、少しだけ、力強く握られ、更に安心感を持った。


…歩くこと数分。

着いたところは、一軒の居酒屋。

「…色気も何もないけど」

博さんは苦笑い。


私は首を振った。

「そんな事、気取ったお店は緊張してあんまり好きじゃないです。

こんな所の方が、おちつきます」


「そう言ってもらえると嬉しいよ」


・・・店の中に入った私たちは、一番奥の、テーブル席に座り、

おつまみと、ビール、チューハイを頼んだ。


「お疲れ様、乾杯」

「お疲れ様でした」

グラスを合わせ、乾杯して飲む。


「そうだ、言い忘れてたんだけど、羽菜さんちから、

オレの家、近いんだ…だから、何かあれば、いつでも連絡して、

飛んでいくから」

その言葉に驚きつつ、でもすぐ傍に住んでいた事が嬉しくて、

笑顔で頷いた。