大工さんに恋していいですか?おまけ追加中

「母さんは、博之を溺愛してたからな」

そう言ってお父さんは笑う。


「子供がオレだけしかいなかったからだろ?」

博さんはバツの悪そうな顔でそう呟き、遺影に目線を向けた。


「これは、博之にもまだ話してなかったんだが」

「「・・・」」

突然のお父さんの言葉に、私も博さんも顔を見合わせた。


「母さんは、元々心臓に持病を持ってたんだ」

「・・・そんな、そんな風には見えなかった」

お父さんの言葉に驚きながら博さんが言った。

私は何とも言えない気持ちで、話に聞き入っていた。


「博之を産めば、死ぬかもしれないと、医者に言われたんだ。

だから、私は産むなと言ったよ。でも、母さんは産むの一点張りで。

まだ20だった大工見習いだった私だが、博之も母さんも、

この手で守り抜く事を決めた。それから16年。母さんは時々発作を起こしたが、

それでも毎日、苦しい顔一つしないで、博之を育て上げた。

でも、博之が大工になる道を選んだ矢先・・・

買い物帰りに、横断歩道で突然の発作。そこに運悪く車が来て・・・

まだ35だと言うのに、帰らぬ人になった・・・」


私はあまりに悲しみがこみ上げて、泣かずにはいられなかった。

そんな私を博さんは片手で、私の肩をギュッと抱いていた。