「尋翔くんには…」

「聞いていない?」

「はい」


 ここで、担任は尋翔に相談された事を、夢子と翔汰に言った。

 放課の時、睨まれた事。

 日に日に避けられている気がする事。

 見えないところに、増えていく痣の事。

 これら3つを、翔汰は知っていた。

 だが、夢子は知らなかった。


「翔…汰…」

「何?」

「お前、……知ってた、な…?」

「……………うん。ごめん」


 どうして言ってくれなかったんだ。

 
 言いたかった。

 声に出したはずだった。

 実際、声に出ていたのは。


「あああっ………!!うあぁぁああっ!わあああっっ!!っ気付けっなくてっ!ごめんっ!!わああぁっ!ごめんなあっ!ああああっ!!」


 コツン

 何かが、応接室のドアに当たった音がした。


「入っておいで」


 翔汰が、その何かに声をかけた。

 しばらくして、キィとドアが開く音がした。

 入って来たのは。


「おい、ババア」


 仏頂面の悠翔だった。