尋翔は悠翔になりたかった。

 決して、喧嘩が強くなりたいだとか、そういうグループに自分も属したいとかそういう願望は一切ない。

 ただ、つよくなりたかったのだ。

 悠翔のように。


「尋翔くん?」

「あ……はい?」

「皆、向こう行っちゃったけど、尋翔くんは皆と一緒に遊ばないの?」


 大放課中。

 担任にそう聞かれたことがあった。


 俺には……。


「はい…。外で遊ぶのは苦手なので…」

「そう?でも、悠翔くんはあんなに元気よくはしゃいでるのに」


 比べられた。

 いつも。

 『悠翔より』

 『悠翔くんと』

 『悠翔とは』

 『悠翔くんに』

ユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトトユウトウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウトユウ


 皆悠翔と尋翔を比べては、尋翔を褒めた。


 俺、そんなにいい事やったかな?


 自分は普通に生活しているだけのなのに。

 なぜ、比べられなくてはいけないのか。

 理由が解らなかった。

 そうして、日に日に、悠翔は尋翔の事を恨んでいったのだろう。