「落ち着いた?」


 一体、どれだけそうしていた事だろう。


「うん……。サンキュな」

「いいえ。落ち着いたなら何よりだよ」


 親の反対を押し切ってまで2人は結ばれた。

 強く愛し合っていた。

 出会いは唐突で、ヤンキーに絡まれていた翔汰を夢子が助けた事から、2人の仲は急激に縮まった。

 クラスメイトであったけれど、不登校な夢子を覚えていたのは、奇跡に等しいのかもしれない。


「あの時、夢子が助けてくれなかったら……。神様に感謝だね」

「うん」

「出会えて本っっっっっっっ当に良かった」

「…ぅん」

「夢子は悪くない。…誰も悪くない、夢子も尋翔も、僕も……もちろん、悠翔もね」

「ぅん……」

「誰のせいでもない。…誰も悪くなんかないんだ」


 夢子は翔汰の肩に、自分の頭を預けた。


「きっと……将来はいい奴になるさ。…僕に似て、ね」

「自画自賛かよ…」

「ふふっ。たまにはいいだろう?」

「……っ、ああっ…ぅあああっ…」


 悠翔がグレたのは、夢子のせいではいないけれど、自分が犯してきた罪と悠翔の行いが余りにも似ていたから、夢子は自分を責める事しか出来なくなっていた。

 日に日に悪くなっていく悠翔の態度や行いが、一体どれだけの人に迷惑をかけているか。そして、まだ若かったあの頃の自分とピッタリ重なって。

 悠翔のどこかに自分の面影があるのは、気のせいじゃない。親子だからというありきたりな事だけじゃなく、きっとそういう事も含まれている。

 親にどれだけ言われても、何と言われても、夢子の行いはやはり悪くなっていくだけで、結局、諦められた。見捨てられた。もうこいつはどう頑張ったって治りゃしない。放って置くしかない、と。

 それが寂しくなかったと言えば、ウソになる。