尋翔がやっと泣き止んだのと同じくらいに、階段から足音が聞こえてきた。


「ん…。夢子か……な。尋翔、ちょっと母さんと話あるから、1人で食べててくれるかな?」

「うん。いいよ」

「ありがとう」


 ニコリと翔汰は微笑み、階段の方へ向かった。


「クソ……」


 階段から、そんな呟きが聞こえた。


「夢子」

「……っ。…、翔、汰…」


 夢子は、自分の手の甲を自分の口に当て、声を殺して泣いていた。正確には、泣きかけていただが。


「どうしたの?」

「っ…んでも、ねぇよ」


 そっぽを向いた夢子の頬を、1つ雫が伝う。


「……夢子は悪くないよ」


 翔汰は、今1番欲しい言葉を、優しく言ってくれる為とてつもなく性質が悪い。


「るせぇ…」

「悪くない」


 翔汰は夢子がいる段より1つ下の段まで上ると、夢子を優しく抱きしめた。


「ぅっ……」

「泣いても、いいんだよ?」


 ほら…、こいつはいつだってそうだ。


「…性質悪ぃ」

「ん?何の事?」


 無自覚なのだから、更に性質が悪いと来た。