上で悠翔と夢子がギャイギャイ騒いでるとき。

 下のリビングで、尋翔と翔汰は、夕食を摂っていた。


「はは。毎度毎度だねぇ」

「……うん」

「…どうしたの?元気ないじゃん?」


 優しく微笑みかける翔汰に、尋翔は涙が零れそうになった。


「………何でも、ない…」


 涙をこらえ、尋翔は言った。


「そう?」

「うん……」

「まあ、深追いはしないさ。……ツラかったら言うんだぞ?いいな?」

「……うん、ありがとう」

「なに。当たり前の事だよ」


 正義感の強い翔汰は、中学教師である。ちなみに担当教科は、社会だ。


「…今日、ね…」

「うん?」


 言いたくはなかったのだが、心がモヤモしてしょうがなかったからなのか、尋翔は今日教室で悠翔に睨まれた事を話した。


「そう…か…。そんな事があったんだね。話してくれてありがとう」

「うっ…うぅん……。だい、じょぶ…」

「うん、うん。ありがとう」


 堰き止めていた涙が一気に溢れ出した尋翔の頭を、ポンポンと翔汰は軽く撫でてやった。


「さ。晩ご飯食べよう?」

「ぅ…うっ、ん…」


 尋翔はしゃくり上がりながらも、夕飯に箸をつけた。