一旦、尋翔は悠翔の部屋を訪ねた。

 チャイムを鳴らしても返事はおろか、やはり物音1つ返って来ない。


「いねーのかー?」


 念の為、渡されていたスペアキーを、恐る恐る鍵穴に差し込んだ。


「入んぞー」


 掠れながら震えながらの、尋翔のその声はとても小さくか弱かった。


「……ゆう…と………?」


 ウソだろ。

 なぁ、ウソだろ?!


「悠翔!!」


 いない。

 リビングにも、風呂場にも、寝室にも、トイレにも、どこにも、どこにも悠翔はいない。


「なぁ!!悠翔!!」


 ウソだ。

 そんなの…。


「なんで………俺だけ、残ってんだよ…」


 なぁ、悠翔。俺が昔、偉ぶって言った事、覚えてっか?『人間ってなんて脆いんだろう』なんて、少しでもお前が泣き止めばって思って、お前の気休めになればって思って、そんな事、口にしたんだよ。

 実際、俺も思ったよ?でもね、それは俺自身が体験したからなんだ。

 俺は、見えないところで、


「たくさん人を…傷つけてきたんだよ……?」


 口調が昔の尋翔になった。

 前が滲んで、よく見えない。