「………ホント、心臓止まるかと思ったんだぞ」

「は?」


 急に、ポツリと尋翔が呟いた。


「お前、俺に連絡寄越さなかったろ」

「あ?……あーまぁ、な」

「隣から物音1つ聞こえないと思ってよ…」




 隣から物音1つ聞こえなくなったのを不審に思った尋翔は、一旦事務所に連絡をした。


「あの……悠翔、そっち行ってませんか?」

「え?悠翔君?来て……ちょっと待ってね」


 少しの間があって、また事務所側から声が返ってきた。


「来てないよ?どして?」

「あ、いや…。部屋にいないみたいで」

「えっ!?ホントに?!」

「はい」

「まさか、失踪………とかじゃ、ない…よね」

「多分…としか言い様が」

「だよね。…うん、分かった。じゃぁ、こっちはこっちで探しとくからさ」

「はい。あ、でも多分ですから。もしかすると部屋にいるかもです。俺も、探しますね」

「うん、しくよろっすー」

「失礼します」


 ケータイをソファーに放り投げると、尋翔は膝から崩れ落ちた。


「くそっ………、どこ行きやがった、あんのバッキャローは……」


 もし、本当に失踪だとしたら。

 廉に続いて、悠翔まで………。


 考えるな、俺。今は、それより、あのバカを探す事だ。そっちに集中しろ。余計な……悪い事は考えるな。