「泣くなら泣け。……気にはせん」

「あっ…、りがとう………ござい、ま…す…」


 パタ、パタとスリッパの音が小さくなり、悠翔は泣いた。


「あぁっ……うぁああっ…ぁぁああ………!!」


 声を上げて。

 まるで子供のように。


「廉……廉…廉…廉、廉……」


 何度もその名前を呟いても、その人物は戻って来ない。


「悪い……」


 なぜ、謝るのだろうか。

 悠翔自身にも分かっていなかった。