「いててて…。あ、ごめんねぇ、待たせちゃったわねぇ」
「あ……、いえ…」
腰を叩きながら家から出てきたおばちゃんの右手には、1枚の写真が握られていて。
「あーはい、これね。音乃さんと旦那さんの廉さんとあたしの写真。隣りに引っ越して来た時にね、なんとなく写真撮ってもらったのよ。ウチの旦那に。一応、そういうの職にしてる人だもんで、まぁまぁ上手く撮れてるでしょ?」
長々としたおばちゃんの写真の説明を、右から左に聞き流して、悠翔はその写真を食い入るように見た。
廉の右側で、向日葵のように笑う女性。それが音乃であろう。
「この人……が…、」
「そう。この人が音乃さん」
そう言っておばちゃんは、案の定廉の右側の女の人を指差した。
「この人……」
どっかで。
どっかで見た事があるような。この人。どっかで。
どこでだ?どこで見た?
グルグルとそんな考えがループするなか、悠翔は自分でも思ってもいない事を口走っていた。
「あの、この写真……頂けませんか」
「え…?」
「あ、いや。…思い出の品ですので、……別に無理は…」
「良いわよ?」
かなりあっさり認められ、悠翔は虚ろな眼を少しだけ見開かせた。
「良いお友達だったんでしょう?聞いたわよ。あたし、神ノ間さんとことは付き合い良くてね」
おばちゃんは、頬に手を当て微笑みながら話した。
「廉さん、すごい貴方の事、嬉しそうに話してくれたわ。あ、でも、ご兄弟いらしてますよね?」