「キャー!!」


 黄色い声が飛び交う廊下を、堂々と歩く3人。

 
「廉様ぁぁぁぁっっ!」

「尋翔くぅぅぅんっっ!!」

「悠翔くん、こっち向いてぇぇっ!」


 その声1つ1つに笑顔を飛ばすのは、神之間廉。

 声を無視して、そんな廉を引っ張りながら歩く2人は、乙津悠翔と乙津尋翔だ。


「なんで1人1人にウィンク飛ばしてんだと、てめぇは」


 廉の左腕を持つ悠翔が、廉の耳に顔を近づけながら言う。


「ファンサービスさ。サービス精神は大事だろう?」

「理解出来ん」


 渋い顔をしたのは廉の右腕を持つ尋翔である。


「ったく。…女の目も恐ぇが、」


 そう言いながらさり気なく悠翔が自分たちを取り囲む女共―廉曰くファンの後ろにいる男達をチラリと見やる。

 男共は、まるで忌み嫌う様な、いや、実際忌み嫌っているのだろうが、そんな視線を悠翔達に向けていた。

 
「わあ、憎悪の目」


 棒読みで廉はそう言うと、ファンに向ける目とは全く違う視線を男達に向けた。敵対意識剥き出しの豹の如く、突き刺さるような視線を。

 すると、男達は尻尾を巻いて逃げて行った。


「わー、廉くん、コワーい」


 逃げた男達を尻目で追いながら、ニヤニヤ笑いそう言うのは、左側の悠翔。

 悠翔がそう言ったところで、丁度3人のクラスに着いた。