「やめろっっっっ!!」


 尋翔は、勢いよく上半身を起こした。

 体は汗ばみ、シャツはペットリと体に引っ付いて、気持ちが悪い。


「っは、っは、っは」


 激しい動悸に苛まれ、呼吸が乱れる。

 枕は汗でグショグショだ。


「った…」


 ズキン、と胸が痛みだす。

 痛む左胸を押さえながら、ベッドから抜け出す。


「なんなんだよ…」

 
 左胸に当てた手を額に当て、キッチンへと向かう。

 冷蔵庫を開け、スポーツドリンクを手に取り、そのまま口飲みする。

 チャリ…と物音がし、音がした方に目を向ければ、ネックレスのチャーム―小さな十字架が揺れていた。


「廉…」


 雨が強く窓を打つ。

 右隣からは、物音1つ聞こえない。

 スポーツドリンクを冷蔵庫にしまうと、ネックレスを弄りながら寝室へと足を向けた。


「…約束したじゃねぇか」


 歩きながらポツリと呟く。

 そんな事を言っても廉は還って来ないというのに。

 
 分かってんだよ。

 無意味な事ぐれぇ、


「自分が、………俺らが1番解ってんだよ。………んなこたぁ」

 
 言われなくたって。

 それ位。


「……バカ野郎……」


 ベッドに身を預け、小さく呟いた。


「わかってんだろ…………?」