夢。

 そう、これは夢だ。

 分かっているのに。

 そう、思っているのに。


「本当に?」

 
 影が言う。


「本当に、これは夢なのかな?」

「どういう事」

「そのままさ」


 ひらひらと両手を振り、影は何かをアピールする。

 自分の手を軽く引っ張れば、ジャラと重い音が後を引く。

 鎖が絡んでいるのだと今更ながら思い、少し憂鬱な気分になる。


「目、死んでるよ?」

「誰のせいだと思ってんの?」

「あはは。誰のせいだろうねぇ?」


 カラカラと笑いながら、影は軽く質問を躱した。


「ねぇ、手。痛い?」


 手前にある檻越しに、影が問う。


「痛くないとでも?」

「いやぁ、ねぇ?生まれてこのかた鎖で結ばれた事なんて、1回もないからねぇ」


 膝を折り、影は目線を合わせて、肩をすくめた。


「だろうね」


 自嘲気味に笑うと、影はつまらなさそうな雰囲気を醸し出した。


「ねぇ、もっとさ………………………」