降る。降る。降る。降る。降る。

 空から降り続ける雫が、傘も持たない悠翔の髪に、鼻に、肩に、当たっては弾け、当たっては弾けを繰り返す。

 服は既に、水玉模様どころではなくなっている。

 くせっ毛の金髪は、ぺっとりとその額にくっついている。

 ピタリ、となんの前触れもなく悠翔は、その足を止めた。
 
 足元に出来ている水溜りの水面は、雨のせいで揺れている。その水溜りに映る自分の顔を、まじまじと見つめる。

 その顔が歪んでいるのは、きっと水溜りが揺れているせいだ。きっと。


「……ははっ。何、やってんだろうな…。俺……」


 水溜りの自分に、そう問いかける。が、答えが返ってこないのは、周知の事実で。

 少しだけ霞む目を擦り、前を見て悠翔は歩き出した。

 右ポケットに手を突っ込み、ケータイがあるのを確認する。

 ポケットからチラリとケータイの頭を出し、待ち受けを見つめる。

 
「行くから……」


 画面の中で笑う廉に、そう囁いてから、1歩踏み出した。