「じゃな」

「うん。体に気を付けて」


 店が閉店時間を告げるまで、3人は飲み続けていた。

 梯子するかと、廉が聞いたが、尋翔曰く、悠翔は明日も仕事が早くからあるとの事で、その案はボツとなった。

 久しく見なかった同級生の顔を見て、悠翔の心の疲れは取れたであろう。

 3人は居酒屋を出て、人の邪魔にならない様少しだけ道の端によった。

 路駐禁止なのだが、ガン無視して止めてある自転車に、悠翔は軽く腰を掛けた。


「ふぅ……。風が気持ちいな…」


 夜になればなる程冷え込むこの季節。

 酒のせいで火照った頬に、冷たくそして優しく触れる風が心地良いのは、悠翔だけではない。

 3人はほぼ同時に夜空を見上げた。


「…星、見えねぇな。やっぱし」

「だね」

「今度、3人で田舎にある高台にでも行くか?」


 都心では、街の輝きは綺麗だが、自然の輝きが見れない所が欠点である。

 天の川なんてものは、もう存在しないも同然だ。

 
「また………時間が合えばだけど、3人で呑もうね」


 天を見上げたまま、廉がポソリと言う。


「フッ…。あぁ。絶対な」


 整った廉の横顔を横目で見ながら、尋翔は一旦鼻で笑うと、口端を上げた。


「絶対、な。…でも、てめぇら今度は人様の前で抱き合ったりすんじゃねぇぞ」


 満足げな笑みを浮かべながら、悠翔が釘を刺した。


「ふふっ。まだ、根に持ってたの?」

「別に、根に持ってたワケじゃねぇよ」

「家で2人でハグしあえばいいのにねぇ。禁断の兄弟愛さ。燃えるじゃないか」

「野郎が燃えても嬉しかねぇんだよ、ボケ」