「……と…ろと………尋翔…!尋翔!!」

「ん……ぁ、あ……?」

「着いたぞ!…ったく」

「おぁ…?ん、悪ぃ」


 寝違えたのか痛みが走る首を揉み解しながら、尋翔はタクシー代を払い、車から降りた。

 一足先に車から降りていた悠翔が、今まで自分たちが乗っていた車を見送りながら口を開く。


「珍しいな。お前が車ん中で爆睡なんて」


 伊達メガネをかけて、歩き出す悠翔。

 太陽はもう沈みかけていて、反対側から夜の証が覗いている。


「そうか?」

 
 まだ痛みは完全には治っていないが、少しマシになった為、尋翔も悠翔の後に続く。


「ああ。だって、おめぇいつも車ん中じゃ、スケジュール帳ガン見してんじゃん」

「あー…、かもしれんな」


 今までの自分を振り返り、いくらか相槌を尋翔は打った。


「だろ?…んで?公園まで行って何すんの?」

「あー。ちょい待って」

「おぉ」


 尋翔はトレンチコートのポケットをまさぐると、ケータイを取り出し画面を操作し始めた。

 数秒経ち、尋翔の手の動きが止まった。

 と思えば、すぐ震え出すケータイに尋翔は再び目を落とす。


「ん。…行くか」

「あー、おぉ」


 横からじっとその様子を見ていた悠翔だが、こいつでも十分芸能界で食ってけるカオしてんのにな、と改めて深く思うのだった。