悠翔が局を出ると、先に出ていた尋翔がタクシーを捕まえて待っていた。

 
「サンキュ」

「おぅ」


 2人がタクシーに乗り込むと、尋翔が運転手に行先を告げた。


「薔薇園公園まで」

「あ?こーえん?」

「おう。公園」

「なぜにして、公園まで?」

「行きゃ分かるから、黙ってろ」


 乙津兄弟は、よく尋翔の方が兄で悠翔の方が弟と間違われるが、それはきっと、いや絶対、顔立ちだけではないだろう。

 それは、生い立ちにあったと、感傷に浸る尋翔の頭の中を、少しだけ覗いてみることにしよう。