「はいオーケーでーす!」

「お疲れ~」

「っかれーっす」


 一気に騒がしくなる現場。


「やー、相変わらず息を飲む演技だね~。乙津くんは」

「お疲れ様っす」

「う~ん、いやはや。前回のドラマじゃ狂気的誘拐犯の役だったけど、今回は純愛のヒーローねぇ…。ギャップ萌え?的な感じかな」

「ギャップ萌えがイマイチ理解できてないんすけど…」

「まぁ、なんにせよ、乙津くんの演技はハナマルだって事だよ」

「ありがとうございます」


 1人でに喋りつづける監督から、悠翔は逃げ出した。

 
 そういや。


「あれ?マネさんの尋翔くんいないの?」


 衣装さんに声を掛けられた。

 この衣装さんは何度かお世話になっており、尋翔、悠翔とも顔なじみである。


「そうなんすよ。…最近見かけなくなって」

「あれ?部屋隣りじゃなかった?」

「はい。…でも隣りから物音1つ聞こえなくって」

「それ、マズいんじゃないの?!」

「っすかね?」

「まー、他人事じゃんか」

「いや、結構焦ってはいるんすけど」

「見えない!焦ってるように全然みえないよ?!」

「ま、そのうちひょっこり顔出すっしょ。多分」

「そうなるといいね。…探しはするんだよ?」

「あ、はい」

「する気ゼロでしょ」

「探しますって」

「なら良し」