「君が…君の事が…」

「それ以上は言わないで!!」


 切なげに言葉を紡ぐ彼に背を向けた彼女は、彼の言葉を遮り声を荒げた。


「っ」

「怖いの……。貴方の気持ちは、前からずっと分かってた。…それに、私も同じ気持ちよ…」

「なら…!」

「でも!……でも…」


 彼女の表情もまた、切なく苦しそうだ。


「貴方………人間じゃないのでしょう?」


 振り返った彼女は、その大きな瞳にこれまた大粒の涙を湛えていた。


「っ…!……そう、だけど…でも」

「私は、あなたを愛してる。…ううん、愛してた」


 彼女が言葉を過去形にしたのには意味があるのだろう。


「俺…は」

「知ってる」

「誰に、聞いた……?」

「貴方の友達のみーくん」

「みつる……か」

「みーくんもなんだってね」

「ああ。………あいつも、俺と同種のイキモノだ」

「私、貴方の事一生忘れない。…貴方の事」


 最初で最後のキス。


「言うな。…寂しくなるだろ」

「…うん。…貴方らしい」


 そのキスは、何故だかしょっぱかった。