「っ!」


 本当に夢だった。

 
 来たよ…。夢オチってやつ…。


 夢であってくれと願ったものの、本当に夢だったとは。何とも言えない喪失感というか、空しさというか。


「おはよ」

「っっ?!」


 聞きたくない声が、尋翔の鼓膜を震わせた。


「昨日はお疲れ様」


 その態度と、影で顔が見えないのは、昨日と全く変わっていない。

 今さっき気づいた事だが、両の手首は頭の上で鎖に繋がれている。

 ここは牢獄か何かなのか、目の前には策がある。

 床は、


 石…?


 か何かであろう。

 少なくとも、畳や絨毯ではない。

 床から伝わってくる冷たさには、そろそろ慣れてくる頃だ。

 今更ヒリヒリと痛み出す昨日の傷跡。

 尋翔が顔をしかめると、影が口を開いた。


「…痛い?」

「ったりめぇだろが」


 影を睨みつけると、影は少し肩を落とした。


「ごめんね」

「…は?」


 影は尋翔の首筋の傷跡に触れた。


「でも、…これからもっと痛い事になるかも…知れないね」


 影はクスリと笑った。