引き返した影は、尋翔の前に立った。


「…」


 無言で見下ろした後、どこかへ行き、再び戻って来た。


「しょうがないなぁ」


 パサリと、ほぼ上半身裸の尋翔にタオルケットをかけた影。


「風邪、引かないでよね」


 意識を手放して、寝落ちした尋翔の前髪を掻き分けた影は、その額に割れ物を扱うかのような優しさで口づけを落とし、小さく笑った。


「…お休み。……明日も楽しませてね」


 踵を返した影は、部屋を出ていくとき、本当に小さな声で呟いた。


「僕の実験体記念すべき100号さん?」


 そう呟いた。