「ん…?」

 
 尋翔は、手首に何かしらの冷たさを感じ、目が覚めた。

 ジャラ…

 少し腕を動かしただけだというのに、重々しい音がその後に続いた。


「は…?」


 真っ暗。

 確かに目を開いたはずなのに、自分の目の前は真っ暗だ。

 手首の冷たさは、相変わらずだ。


「おはよう…。時間的にはおかしいけどね」


 上から降ってくる声に、聞き覚えがあった。


「お前…」


 記憶の棚を弄るも、なかなか出てこない。


「誰…だ…」

「わー、失礼な人だな~。もぅ」


 膨れた顔で言ったように聞こえた。


「まぁ、でもいいさ。……それはそれで好都合だしね」


 独り言を、独り言以上の声の大きさで呟くそれ。


「何が言いたい」

「さぁ?…ねぇ、酷い事してもいいよね?」

「は?」


 脈絡のないその質問に、尋翔は呆気にとられた。


「真っ暗ってヤだよね~」


 呟いたそれは、尋翔へ近づいた。


「ん…」


 目隠しをされていたから目の前が暗かったようだ。