「…………悪ぃ」


 俯いた悠翔は、ぽつりと呟いた。


「謝って済むなら、こんなに…こんなに、心配なんか、してねぇ…よ…バッキャロー……」


 無視した雫が、次から次へと零れてきて、もうどうしようもなかった。

 言葉の通り、尋翔は泣き崩れた。


「廉もっ、いなくっ、なってっ……お前までいなくなったっらっ…俺、俺…どうすりゃっ、いいんだっ……よぉっ」


 もう、総てがどうでも良くなって来て、尋翔はその場に泣き崩れた。

 悠翔が無事なら、それで良かった。

 兄弟として、親族として。

 悠翔が無事なら。


「ざっけんなよ…マジで…。ざっけんな、おめぇら、マジでっ…ふざけんなよ…」


 『おめぇら』。

 そう、悠翔だけじゃない。


 勝手にくたばりやがって………。

 なんか1言言えよ、バカ野郎。


 小さく呟いた尋翔の顔は、もうイケメンの『イ』の字もない。


「悪い……悪かったな…」


 悠翔の胸に顔を埋めて泣きじゃくる弟の頭を、悠翔はポンポンとこれ以上なく優しく撫でながら、小さく謝った。


「もう………1人になんかしねぇから…な?………悪かったな」

 
 頭から降ってくるその声が、優しくて心地良い。

 なんだか癪で、尋翔は少し拗ねて言った。


「ホントだろうな……。ウソ吐くなよ…。もしウソだったら………ブッ殺すかんな……」