「ここに悠翔が死んだら泣くヤツがいるんだから。…ね?」


 絡めた小指を大事に見つめる。

 
 ああ、今、俺たちは、心を交わしてるなぁ。


 なんだか、その絡めた小指が愛しくなってきた。

 はじかれたように顔を上げた悠翔を、尋翔は微笑みながら顔を上げ首を傾げた。


「泣く、ヤツって…?」


 ぐしゃぐしゃの顔の兄を見るのは、初めてだ。

 少し可笑しくなってきて、口角を上げた尋翔は、足元に視線を落とし、もう1度悠翔を見た。


「俺の事に決まってんじゃん。それに、母さんや父さんもね」


 悠翔、知らなかったっぽいけど、皆、悠翔の事、好きだよ?

 もちろん、俺も、ね。


 目を見開いた悠翔。


「ウソ……」


 目を細めた尋翔。


「ホント」


 死ねばいいなんて、少なくとも俺と父さんと母さんは思った事1回もないから。

 今までたくさんかけてきたこの心配は、もっと大きくなってから、これからでもいい、すこしづつでももちろんいい、償っていけばいいよ。

 待ってるから。

 迷惑だなんて思ってないから。

 いつまでも、こんな事言える立場じゃないけど、成長してたくさんたくさん、心配させた倍以上、人を笑顔にすればいい。

 それで全てが償えるとは限らないけれど、それでも、俺は待つよ。

 悠翔の事、好きだから。大事だから。