俯いた悠翔の顔を覗き込み、続ける。


「人間てさ、比べることが大好きなんだ。あの子と比べて、この子に比べて…。それで傷つく人間がいるって事にも気付かずにね。…十人十色なのに」


 どうして、比べたがるのだろうか。

 残る不利益と悔しさ、悲しみ。

 それらを、どう処理すれば良いのだろうか。


 悠翔にぶつけるしか…ないの?


「死にたい、だなんて思わないで。…思った事、ある?」


 俺はたくさんある。

 悠翔をたくさん傷つけて。それでも、何もする事が出来なくて。

 謝る事すら出来なくて。泣く事しか出来なくて。

 ごめん。ごめん。ごめん。

 もう、何回言ったかな?数えきれないよ。

 それを声に出すのが怖くて。

 臆病で、ごめん。

 こんな弟でごめん。

 死にたいよ。悔しくて。哀しくて。

 もう、嫌だよ…!


 頷いた悠翔は、唇を噛み締めていた。

 尋翔は少し驚くと、眉根を下げてフッと笑い続けた。


「もう思わないで。絶対。ね?約束」


 むりやり尋翔は、自分の小指と悠翔の小指を絡め、指切りを交わした。

 
 俺も、もう思わない。

 
 笑うと、絡めた小指に、力を加えた。