「おい……。悠翔…。もう1回言ってみろ」

「ああ!何度でも言ってやるよ!俺の事なんかっ」


 今まで見た事のない父親を見て、父親の声を聞いて。

 だが、それだけではない。

 ドンッ!!

 ものすごい音がして、少しだけ家が揺れた気がした。

 尋翔は、音と共に目を瞑ったからか、何が起きたか理解するのに時間がかかった。

 そっと目を開いてみると、悠翔が玄関のドアに背中をついて座り込んでいた。


「…ほんと、お前って馬鹿だな」


 翔汰もそう呟き、踵を返すと、階段を上った。


「ゆ、う…と」


 震える唇で悠翔の名前を呼ぶ。
 
 反応はない。

 
「悠翔…」


 もう1度呼ぶ。


「あ?」


 悠翔は、尋翔を睨みつけた。


「てめぇ…。俺を踏み台にしてここまで来た気持ちはどうだよ?」

「そんな事…思って…」

「てめぇのそういうトコが大っっ嫌いなんだよ!気付いてんのか、この薄らハゲ!!てめぇが面倒見いい性格のおかげで、こちとらだらしねぇみてぇなレッテル張られてよ!八ッ、まぁ事実だけどよ!」


 踏み台。

 悠翔の弱点を売って、金を儲けた事だろうか。

 いや、それ以外にも、自分と悠翔を比べて、優越感に浸っていた事だろうか。

 考え出すときりがない。