「悠翔!!」


 次の日、尋翔はそんな大きな声で目が覚めた。

 声の主は、夢子だった。

 声のした階下に降りると、悠翔が俯いて立っていた。

 その体は傷だらけで、ずぶ濡れになっていた。

 時刻は、もう日付を超えて3時間が経過したくらいだろう。

 外は、雨が滝のように降っているのが家の中に居ても、音で分かった。

 
「心配したんだぞ!」


 夢子が、そう泣きながら怒鳴り、翔汰が毛布と温かいミルクを悠翔に渡した。

 
「るせぇよ」

「バカっ!」


 反発した悠翔の頬を、夢子が平手を食らわせた。


「った」


 一瞬何が起こったのか解らず、悠翔は叩かれた頬を手で押さえ、目を見開いて夢子を見つめた。

 涙ぐみながら、夢子はもう1度「ばか」と呟くと、踵を返して、階段を駆け上がった。


「んだよ…あの、クソババア」

「悠翔。…心配したのは、本当だよ。どこ行ってたの」

「んなのどこだっていいだろうが!」


 そう叫ぶと、悠翔は玄関を飛び出そうとした。

 が。


「待て」


 鋭い声が飛んできて、悠翔の腕をつかんだ。


「言え。…どこまで人に心配かければ気が済むんだ。馬鹿が」

「はぁ!?お前らなんて、俺の事…!俺の事!!…っくそ。ほっとけよ!俺の事、何とも思ってねぇくせに!!」

「っ!?」

 
 階段の上にいた尋翔は、唾を飲んだ。