「尋翔」

「え…?あ、な、なに?」

「早く」


 路地裏。

 背の小さい尋翔は、自分の頭2つ以上の差がある男子達に囲まれていた。

 急かすように1人の男子が言った。

 他の男子達の目も、何やら卑しく光っている。


「あ…こ、これ…」

 
 尋翔が手渡しのは、2つに折り畳まれた白い紙。


「ふはっ。…さんきゅな…」

「クククッ。これで…ははっ」

「やっとだ…。……ふはははっ」


 各々、意味深な言葉を口にした、男子達。

 尋翔が手渡したそれは。


「これが…あいつの………、悠翔の弱点、か」

「これを突いて、次こそあいつらを…吐羅威暗狂を、悠翔をぶっ潰す」


 そう。

 悠翔の兄弟だからこそ分かる、知ってる悠翔の弱点。

 それを敵方に売るのである。

 たまたまだった。

 これをして、小遣いを増やそうと企んでいた訳ではない。

 たまたま、本当にたまたま、そういう奴らに目を付けられ、金をやるからその分の悠翔の弱点を売れと言ってきたのである。

 こんなことして良いのだろうか、そんな事を考え出した方が負けである。

 そして、毎回のように、翌日には悠翔は帰って来ない。

 3日後程に返って来たと思うと、ボロボロである。

 
 俺。…いいのかな。


 1人、ベッドの中でそう考えるのは、もうそろそろ当たり前になって来た。