「母さん!ハッピーバースデー!」
「え…?」
「誕生日おめでとう、夢子」
今日は、夢子の誕生日だった。
夢子と翔汰が学校に呼ばれたのはたまたまだったが、それを翔汰はうまく利用し、サプライズをしようと、尋翔に話を持ちかけたのだ。
リビングに入ると、あまり上手とは言えないが、横断幕に迷いのない筆跡で『HAPPY BIRTHDAY!!MUKO!』と書いてあった。
きっと、尋翔が書いたのであろう。
テーブルに並んでいる料理は、翔汰の手作りだ。
「おめっ…ら…」
「尋翔…」
「あ」
夢子が感動して手の甲で涙を拭くと、翔汰が尋翔に耳打ちをした。
「せーの」
「お誕生日おめでとう!」
翔汰は、小さな声でそういうと、尋翔と2人声を合わせた。
「っく…そ、」
「えっ?!母さん?!どうして泣いてるの?!」
「ふふふっ。それはね、母さんなりの喜び方なんだよ」
目を細めた翔汰は、尋翔にそう言った。
「るっっせぇっ!!」
「いたっ」
夢子は、泣きながら、軽くだが翔汰の頭をはたいた。
「ちょっくら…っ、トイレ行って…来るっ…」
「いってらっしゃい。…ふふっ」
「まだっ、笑うか。…こんにゃっ、ろ…」
「ごめんごめん」
ま、そんなところが可愛いんだけどさ。