キーンコーンカーンコーン………
「はい、では授業を終わります、起立」
国語の先生の言葉でみんな立ち上がる。
いよいよ放課後だ。
…委員会だ。
あれ?
でもどこで委員会なんだろ?
教室聞き逃したな…
伊織くんに聞いてみても大丈夫だよね…?
みんなが帰る準備をしている中、
私は伊織くんの席に近寄った。
「…いお「伊織〜っ、今日一緒に帰らないっ?」
遠藤さんの猫なで声が
私の声をかきけした。
「今日俺委員会だってば!麗華ほんと話聞かねーよなぁ」
「あ、そうだった!あはは!じゃあ、待ってちゃだめ…?」
さらに続いていく2人の会話の邪魔しちゃいけないと思った私は、静かに自分の席に戻った。
って言っても、伊織くんの席と私の席は会話が聞こえてしまう距離。
とても楽しそうな2人。
なんでだろ。
あんまり会話聞きたくないかも。
「あーでも、初めの委員会だし、多分長いよ?」
「そっかぁ…じゃあ今日は帰るね」
名残惜しそうな声で
バイバイ、と言い教室を出た遠藤さん。
2人は付き合ってるのかな?
委員会の教室どこだっけ?
それだけ聞くのに
勇気がこんなに必要なんて。
さっき声かけたので、勇気なんてなくなってしまった。
委員会どうしよ…
私はとりあえず廊下に出て辺りを見回してみた。
すると筆箱を持った男女2人がいた。
多分、代表委員だよね…?
そう思い、2人のあとに続こうと歩き始めた。
ーーーーーその時。
「しいな!」
私の名前を呼ぶ声。
椎菜、なんて呼ぶ人は
この学校にはひとりだけ。
振り返るとそこにいたのは
やっぱり伊織くん。
「1人で行こうとすんなよな〜!」
そう笑って、ふでばこで私の頭をぽんっとたたいた。
「いたっ」
こんなの全く痛くないのに、
話しかけてもらえたことが嬉しくて、つい余計なことを言ってしまう。
「教室どこかわかんねーから一緒に連れてってもらおうと思ってたし」
……え?
「伊織くん、教室わからないの?」
「え?うん!」
うそ〜っ!
うん!って!
「私もわかんないからさっき聞こうと思って、伊織くんの席行っ…………てはないんだけど」
「椎菜もわかんねーの?!やばい!」
全然、やばい!なんて思ってなさそうな笑顔で話す伊織くん。
「やばい!って思ってないでしょ!」
私がつっこむと伊織くんは"そのとーり!"と言ってまた笑った。
そんな姿を見て私も笑った。
学校で笑顔になったのひさびさかも…!
そんなことを思っていると
伊織くんは1度表情を固めて、
「さ、どーしよっかー」
またいつもの伊織くんに戻った。
「??さっきそこに代表委員っぽい男女がいたんだけど……」
と、さっきの場所を目で追ってみても、あの2人はもういなかった。
見失った……
なんたる不覚……
私が自責の念にかられていると
伊織くんがいきなり走り出した。
「ちょっと待ってて!」
「え、うん!」
伊織くんが走る先には先生の姿。
2人はなにか話している様子。
そして、伊織くんがぺこっと頭を下げてこちらに戻ってきた。
「多目的室!」
「あ、うん!ありがと!」
伊織くん聞いてきてくれたんだ。
行こーぜ!と言って歩き出す伊織くんの後に続いて私も歩いた。
