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…………………

………






「……の、おい、花野!」



「……?もう2時間目始まりますか?…先生………………………って、えっ?!」



先生、じゃない………


伊織くん……?



「なんで……?」


「んーっ、俺、男子代表委員だから寝ているクラスメイトを起こしに来た!」


「え……結局、いお…、あなたが代表委員になったの……?」



さっき初めて喋っただけなのに
伊織くんって本人の前で呼んでしまうところだった。


苗字なんだったっけ……?



「うん!まぁ目立つしな!」


「いや、そんなに目立たないよ….現に私まったく目立ってないし」


「それは目立とうとしないから!俺は目立ちたがり屋だから!」



………そう言ってにかっと笑う伊織くんは、やっぱり私とは違うな、と思った。




「あの、さ、聞きにくいんだけど、名前なんだったっけ?」


「おれ?いおり!」


「いや、苗字の方は……?」


「おしえねー!下の名前しか知らないなら下の名前で呼んで!」



そしてまた太陽みたいな笑顔を見せた。


そんな屈託のない笑顔、まぶしすぎるよ。


「………伊織、くん?」

「はーい!」


ふふ……

なんだか犬みたい!


私は少しだけ笑みがこぼれた。



「じゃあー、……しいな!」


…………?


私の名前………?


「返事してよ!恥ずかしいじゃん!」

「しいなって、私のこと……?」



「花野椎菜、でしょ?」

「うん……」



なんだか照れた。

高校の人に下の名前を呼ばれるなんてことなかったから。


いつもみんな、花野さん、だから。


伊織くんは、私の名前を知っててくれたんだ……。



認めたくないけど。

心の中に素直に喜んでいる自分がいた。




「もどろーぜ!椎菜!」

「う、うん…!!」