ガキの頃からの幼馴染みがいる

そいつは こわいくらいに

綺麗な顔をして みんなが羨む

美貌をもって 昔から ひどく

とても美しく わらう

奴だった


おれ以外で あいつと喋るひとは

ほとんどいなかった 憧れるだけで

なにもできない それが

あいつに惚れた 者の うんめい


顔が整っている それだけで

関心をもたれる 感心される

だからか 幼馴染みは

性格のつかめない 奴で

おれでさえも 理解できていない


ある日 幼馴染みが言った

「最近機嫌がいいの」

そして わらった

言われるまえから 気づいていたが

たしかに ひとりで微笑んでいる

ことが 最近多い気がする


「どうして」

「おもちゃが可愛くて」

「おもちゃ?」


話を聞くうちに それが

ペットのことだろうと 思った

ペットをおもちゃというのも

あいつなら頷ける


あいつのペットは どうやら

黒い毛の 犬のようだった

話によると 眼がまるくて うるうる

見上げてきて かわいいらしい


「今度見せてくれよ」

「いいわよ」


単なるその場の おもいつき ただ

ただそれだけで 約束した話だった


後日 ひさしぶりに幼馴染みの 家を

おとずれた おれは ひさしぶりに

あいつの部屋に はいって 眼を

自分の 目を 疑った


「可愛いでしょう。愛してるの」

そう言って あいつは それは

それは いとおしそうに ペットを

おもちゃの 少年の頭を なでた


愛 とは なんだったっけ

ワイシャツだけを 身にまとい 床に

ひざを つけて びくびくふるえる

大型犬用の 太い 黒い 皮の 首輪

白い 細い 少年の首に 似合っていて


そう おれはその時 似合っている

と 思ったんだ 理性の裏で そう

感じて 愛の定義を 思い出す 裏


幼馴染みに 触られるたび こきざみに

ふるえる 黒い髪 肌の白い少年 は

なみだめ で 涙をためて うるうる

おれを 見上げて


「舐めなさい」

鼓膜の底で 遠く ひびいた気がした


少年 が おそるおそる 伸ばした

伸ばされた おれの 指 指先を

うすい そのくちびるから 赤い 赤い

真っ赤 な 舌 なでるように なめて


ねえ 「感想は?」


「おもしれえ」 にやり 自然と

口の端 あげた 大きな 眼の中 の おれに


満足そうに とても 思惑どおり と

微笑んだ あいつに おれは まだ

ひとめぼれを くりかえして また

ひとめぼれから のがれられなくて